
メダカの飼育に限らず、魚の飼育を始めるときによく耳にする”ろ過バクテリア”。
熟知して活用されている方もいれば、なんとなく聞いたことがあるかなって感じの方も多いのではないでしょうか?
私も淡水魚の飼育を始めて数年間は???の連発でしたが、今は販売店を営みながら蓄積した経験や知識があるので、バクテリアをコントロールすることも随分上達してきました。
みなさまはろ過バクテリアの特性や詳細について把握されていますか?
今回は、知っているようで意外に知らない、ろ過バクテリアについてご説明させていただきます。
きっと、皆さまのお悩みを解決できると思います!
ろ過バクテリアとは、生き物の排泄物や餌・死骸などの有機物をアンモニアに分解し、更に発生したアンモニア(NH3)を害が少ない硝酸塩(NO3)に分解する特徴を持った細菌の総称です。
ろ過バクテリアはどこにでも存在しているので、水槽に水を張っておくだけでも自然に飼育水に溶け込んで増殖していきます。
ろ過バクテリアが存在するお陰で『屋外でタライにメダカを数匹飼っているけど水替えしたことないよ』みたいなことが実現できてしまうんです。

『じゃあ、なんで水替えをしないとメダカが病気になったり死んだりするの?』って疑問になりますよね?
今回は、そんなろ過バクテリアにまつわる疑問に徹底解説していきたいと思います!
【STEP1】ろ過バクテリアは大きく2種類が存在します

ろ過バクテリアは大きく2種類に分けられます!
②アンモニアを亜硝酸、亜硝酸を硝酸塩に分解する硝化菌
①有機物分解菌
有機物分解菌は、壁面などに付着する特徴があり、水槽のガラス面や底砂などを住処にしています

ろ材に住み着くのは有機物分解菌です!
ろ材とバクテリアの関係は以下の記事をご覧ください。
有機物分解菌は、②の硝化菌(以下で説明)に比べて、水槽内で増殖を始めるタイミングが早いです。

あとで説明しますが、この増殖のタイミングのズレが生物ろ過の活用を複雑にしています。
②硝化菌
①有機物分解菌が生み出したアンモニア(NH3)を食べて亜硝酸にする
②亜硝酸を食べて硝酸塩(NO3)にする
硝化菌はろ過におけるこの2工程の役割を持っています。

水生生物に対する有害度は
アンモニア>>>>>>>>>>>亜硝酸>>>硝酸塩のイメージです。
ですから、硝化菌が分解を進める都度、有害物質の毒性は下がっていきます。

硝化菌は基本的に水中を漂って生存しています。
実は『水替えを頻繁にし過ぎるとバクテリアが増えないよ!』って言われるのは、硝化菌の話です。
有機物分解菌に比べて、硝化菌の増殖速度は極端に遅いです。
それが、水槽の立上げに1カ月以上の水槽を空回し(生き物なしで運用すること)が必要となったり、頻繁に水替えをすると勿体ないと言われる理由だったりします。

おおまかな”ろ過”の流れは以下の記事にまとめています。
【STEP2】水替えしないと死んでしまう水槽と、水替えしなくても死なない水槽がある理由
「魚にとって有害な事」とは、糞や餌が水槽に残ることではなく、有機物分解菌に糞や餌が分解されて「水中にアンモニアが発生する事」なんです。
まずは、その有害レベルをご説明します。
アンモニアの量の目安
0㎎/ℓ 基本はアンモニアが全くないことが理想です
0.25㎎/ℓ すぐに危険とは言えませんが、長期間続くと魚が弱って死亡することもあります
1.50㎎/ℓ かなり危険な状態です

上記のアンモニア濃度については、市販の検査試薬などがないと確認することができません。


正直言って私が初心者の頃は、検査薬までは必要ないよって思っていました。
でも、今思い返すと検査薬を買わなかったばっかりに、たくさんのお魚を死なせてきたなって後悔しています。
販売店をやっている今でも経験からくる勘が外れることは多々あります。
ですから初心者~中級者の方が、経験値だけでアンモニア濃度を読み切るのは至難の技だと思います。

ちなみに私が言う勘は、水槽を立ち上げて何日とか水替え後○○日ではなく、魚の泳ぎや水面・水中の水の様子からの判断です。
決して水を換えたばかりだから安心みたいな判断はダメですよ。
結局、死なない水槽と死んでしまう水槽の違いは?
STEP1で書きましたが、①有機物分解菌の方が②硝化菌より先に増殖を始めます。
そのため、新しい水で飼育を開始した場合、最初の1~2週間で増殖した①有機物分解菌がドンドン糞や餌をアンモニアに分解し始めます。

特に栄養系ソイルで立ち上げている水槽は、どんどんソイルが栄養を放出するのでいその傾向が顕著になります。

えっ、まだアンモニアを分解する②硝化菌は増えていないんだよね???
危なくない??
その通りです。

だから最初の1~2週間でポツポツ死が起きるんですよ!
最初の2週間くらいの水槽には②硝化菌が不足しているにも関わらず、①有機物分解菌の働きでアンモニアがドンドン増えていくので、魚がアンモニア中毒で死んでしまったり、弱って病気にかかったりするリスクが高まります。

STEP2の最初で書きましたが、たとえアンモニアが増えたとしても0.25㎎/ℓ以下であれば、メダカがすぐに死んでしまう可能性は低いです。
でも、すぐには死なないって話ですよ。
アンモニアは0mg/lが大原則です。
大きな容器で少ない数を飼育する場合、巨大な水量に対して糞などの有機物が少なく、アンモニアの発生量も少なく済むため、アンモニアが蓄積して致死量に至る前に②硝化菌の増殖が追い付きメダカが死なずに済むのです。
そして、3カ月もするとバクテリアが適正量まで増殖し、次第に水質は安定していきます。

つまり、最初っからたくさん飼育すると危険なのね!
【STEP3】ろ過フィルターについて
ろ過フィルターの種類は大きく分けてA.投げ込み式 B.外掛け式 C.水槽外部に設置するタイプがあります。

水槽外部フィルターがいいのは分かるけど、実際どういう違いがあるの?
A.投げ込み式
投込み式は水槽に入れて、エアチューブを繋ぐだけの最も簡単でシンプルなフィルターです。
STEP1で書きましたが、「有機物分解菌」はガラス面や底砂などを住処にしますので、こういったフィルターろ材にも住み着きます。
しかし、「硝化菌」は内部に染み込んだ飼育水には生存すると思いますが、基本的に投げ込み式では硝化菌を維持できません。
しかも、投込み式を使う水槽は小型の水槽であることが多いので、STEP2で書いたように②硝化菌が増える前にアンモニアの量が増えてしまい水替えが必要となる事が普通です。
そのためフィルターろ材だけでは「硝化菌」を水質が安定する量まで増やすことができず、水替えを繰り返す飼育方法になってしまいがちです。
①場所を取らない
②値段が安い
③(スポンジタイプであれば)稚魚の吸い込み事故がなくて安心
④水流を産み出しにくいので、水流を苦手とする魚には最適
このようなメリットがあるので、濾過力が弱くても愛用されています。
B.外掛け式 C.外部フィルター
BもCもメリットやデメリットは基本的には同じです。

ろ材の量も、維持できる水の量もCの外部フィルターが圧倒的に多く、ろ過力も相応に高いです。
BとCどちらを選ぶかは飼育数や、許容できる設置スペースなどで選んでいただいて良いと思います。
両者とも、水槽の外に第二の水槽を設ける構造ですので、実際の飼育水槽の大きさ以上の水量で飼育が可能で「硝化菌」を多く維持できるので水質が安定し安いです。
水量があるので定期的な水替えで、致命的に「硝化菌」が減少するリスクが少なく、とても安定感があるのがこのタイプのろ過フィルターです。
ただし、大型になるほど吸い込むのも排出も相応に強い水流を伴うので、強い水流が苦手なシュリンプやメダカ、金魚などには使いにくいというデメリットがあります。

基本的にサイズが大きいほどろ過力が高いのですが、サイズ相応に高価で広い設置スペースが必要になるので購入前に検討が必要です。
そのほか、大型なフィルターほど水流が強く、飼育する魚との相性問題が発生します。
メダカのように水流が苦手な魚の飼育の場合は、大型を一個付けるよりも、小型を2個~3個付ける方が安心な場合もあります。

私愛用のテトラVAX60は、高いろ過力だけでなく、大型なのにすごく優しい水流が魅力のフィルターです。
VAXなら水流が苦手なメダカの飼育でも安心してお使いいただけます。


私は
①蓋が透明でろ過槽が視認しやすい
②水中ポンプタイプだから静か
この2点でラクラクパワーフィルターを愛用しています。

でも水流は圧倒的にVAX60が優しいので、ろ過力の高さを含め、予算が許す方は断然VAX60をおすすめします。
【STEP4】ろ過バクテリアはどうやって増やすの?

乱暴な言い方をすると、バクテリアは放置していれば自然に増えます。
確実ではありませんが、水を張って1~2週間で「有機物分解菌」は適度に増えます。
「硝化菌」に関しては一般的に1カ月程度で適量に増えると言われています。
ただ、「硝化菌」が増えるまでに並行して増加したアンモニアを②硝化菌が分解完了してはじめて安定した水槽と言えますので、概ね3か月程度は生態を入れない状態で水槽を放置すると安心と言われています。

3か月って長くない?
そんなに待てないですよね。
市販のバクテリア剤の利用について
水質が安定するまで3か月が目安と書きましたが、3カ月はただ待つにはとても長い期間ですよね。
その期間を短縮するために活用できるのが、市販のバクテリア剤です。

硝化菌はこれを使っています。
アンモニア検査をしたら大量にアンモニアが検出されて、一気に水替えをしたいけど硝化菌が減るのが心配・・・
そんなジレンマから解放されるために、硝化菌だけでも購入しておくと安心ですよ。
〇硝化菌
〇有機物分解菌

ろ過バクテリアは、様々なメーカーさんから発売されていますが、私はどこでも確実に購入できるので、ずっとGEXさんを愛用しています。
注意点ですが、「硝化菌」も大きな括りでは有機物になります。
つまり、「有機物分解菌」は「硝化菌」を食べて分解してしまいます。
そういう理由から、1種類しかラインナップされていないバクテリア剤はご注意ください。
具体的には「有機物分解菌」なのか「硝化菌」なのか、単なるバクテリアの培養液などの観点でしっかりご確認して選んでください。

こちらを使われる方も多いです!
パッケージはバイコムさんの方がカッコいいかな。
バクテリア剤を正しく使用すると、短期間で水が仕上がるというか、そのまま生態を入れても問題が出ることが少ないので、初心者ほどバクテリア剤の使用をおすすめします。

私は水槽が多いので、こんなに大きいのを週に1本使っています。
バクテリア剤は多めに入れても問題ないので、水槽を立ち上げてしばらくは定期的に添加してあげると安心です。
過剰なバクテリアは、エサ(有機物・アンモニア)不足で餓死するだけで害は与えません。

種水を使ってバクテリアの増殖を補助する
バクテリア剤を使わない立上げ方法に、魚が育っていた水槽や、既に立ち上がっている水槽の水を、新しい水槽に混ぜて、バクテリアのお裾分けをする方法があります。
この時に分けるバクテリア入りの水を『種水』と呼びます。
種水を使うと、ただ放置するだけよりは速く水が安定するので、飼育経験が豊富な方はこの方法を使うことが多いと思います。

早く立ち上がるって、どれくらい速いの?
種水で立ち上げる場合、そもそも種水の中にどれくらいバクテリアがいるのかも、もっと言えば本当にちゃんと安定している水なのかも確認する術がありません。
※厳密にはアンモニア計測をすることで、アンモニア0㎎/ℓだから『バクテリアはちゃんと増えていそう』みたいな判断はできます。

なんか曖昧・・・というか不安ですよね。
種水での立上げは、確かに放置しているだけより仕上がりが速いのですが、曖昧な要素も多く経験がないと逆に悪い結果を招きかねません。
私自身、メダカの調子がいいからと種水に使っていた水槽の水が、調べてみるとアンモニアだらけだったという失敗を何度も経験しています。
そう言った理由から、私は初心者ほどバクテリア剤の使用を推奨いたします。
【STEP5】私が経験したバクテリアの注意点
飼育の途中での有機物分解菌の使用は慎重に
有機物分解菌⇒GEXで言うベストバイオは、水槽の立ち上げ時と汚れが酷い時に添加と書かれています。
私は水底の汚れが気になってベストバイオを追加で添加したことがあります。
ベストバイオで水槽内に一気に有機物分解菌が増えると、有機物をアンモニアに分解する作用が加速するため、瞬間的にアンモニアが急増します。
特にシュリンプなどの飼育では、瞬間的なアンモニアの増加でも全滅のリスクが高いのでご注意ください。
飼育数の増減への順応が遅いので注意
最初に書きましたが、「有機物分解菌」は有機物を分解します。
というより、有機物を餌にする生き物という方が想像がし易いと思います。
そして「硝化菌」はアンモニアを餌にする生き物です。
それを踏まえたところで聞いていただきたいのですが、水槽から魚が減るとフンが減ります。
そうすると、多くの「有機物分解菌」はフンが不足して餓死して行きます。
「硝化菌」もフンが減る⇒アンモニアが減る⇒硝化菌も餓死が始まる。
その流れで、魚の飼育数が減るとせっかく増えたバクテリアも餓死でその数を減らして行きます。
バクテリアが減った水槽に何も考えずに魚を増やすと、バクテリアが不足しているのでアンモニアが急増し、魚達は死んでしまいます。
つまり、安定している水槽であっても、飼育する個体数が大きく変わる際は、立ち上げ時と同様に慎重に導入を行う必要があるのでご注意ください。
【STEP6】他の記事ではバクテリアろ過はあてにしないって書いてるけど?

本当に水替えが基本でバクテリアはあてにしないって書いています。
メダカは品種ごとに小さな容器で飼育することが多いです。
また、メダカは凄く水流を苦手としています。
STEP3で書いていますが、小さな容器・投げ込み式フィルターで飼育する場合は、②硝化菌を維持するのが困難です。
その状態でバクテリアを増やすために水換えを控えるのは凄く危険だと思います。
また、全てのメダカ水槽にバクテリア剤を使用するのも金額的に現実的でないので、私はメダカや金魚の飼育に関しては、バクテリアに頼らず日々の換水で水質を維持する選択をしています。
レッドビーシュリンプやグッピーなどは、このブログで書いているようにろ過バクテリアで水質維持をしていますし、メダカも室内で外掛けフィルターなどを使用する場合であれば、ろ過バクテリアを活用したほうが水質を保ちやすいと思います。
そこが、私が水替えを推奨したり、バクテリア剤を推奨したりする理由で、状況や飼育する生体によって水質維持の方法を使いわけています。

バクテリアを増やす理由は水を綺麗にするためなので、バクテリアを増やすことに執着しすぎて水を換えないのは本末転倒だと思います。
ほとんどの魚は水が汚れると泳ぎが遅くなるので、泳ぎがゆったりしてきたと思ったら、悩まずちゃんと水を換えてあげてください。

最後に朝の連ドラ「舞い上がれの」舞台にもなっていて、現在私が居住している五島列島の産品「五島うどん」をご紹介します。
「五島うどん」は讃岐うどんや稲庭うどんと並び日本三大うどんの一つに数えられており、真珠のような白さと細いながらにもっちりとした独特のコシと喉ごしの良さが魅力です。
是非ご賞味ください!